地球が耐えられる牛肉消費量は1日7g

2019年に医学誌THE LANCETが出してる、「人新世の食」を読むコーナー
keene 2025.04.16
誰でも

こんにちは、4月も折り返しとなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。新生活にも慣れましたでしょうか。

こちらはグループワークに悪戦苦闘しております。一昨日のミーティングでは30分一言も発さず、時折うなづいたり考えたりするフリをしながら終えました。しかし、今日の別のミーティングではなんと、1度教授に質問しました。えぐい。レベチ。素晴らしい進捗です。苦しむ中にも前進を見つけて、ここぞとばかりに褒めていきましょう。

さあ、前回でデンマーク人の生活を評価すると、今の生活を2050年まで続けるのは無理だという論文が出ていました。特に、現代の動物性タンパク質中心の雑食生活が環境には良くないんだと。

でもでも、人間にとっては動物性タンパクが大事だろうよと、バズーカ岡田先生やビックヒデ、マッスル北村からジュラシック木澤さんまで、思わず発音したくなるボディビルダーも言っているわけです。

ということで、世界トップの医学誌ランセットが出している、人間と地球両方にとって良い食生活とは何なんだいということを見ていきましょう!

地球の安全域を越える食品

論文では、「人類にとって健康で、地球にとっても持続可能な食」をテーマに、16か国から19名の委員と18名の科学者たちが、地球が耐えられるラインを、おなじみプラネタリーバウンダリーを用いて数値化しております。

ここでは、特に影響の大きい5つを見ていきます〜

⚫︎牛肉:安全域の429%を超過

世界平均で1人当たり30g以上が消費されており、これだけで地球の耐久上限を4倍以上も超えているようです。牛は反芻動物なので、消化の過程で大量のメタンガスを排出するというのが直接的な原因ですね。さらには、土地と水の消費量もダントツでございます。

報告書では、赤身の肉(牛・豚・羊)自体が人間の健康には良いものとは言えず、心血管疾患や脳卒中、がんのリスク増大と関連しており、全死亡率も高まりますと。なので、最適摂取量は1日0gの可能性が高いと示しつつ、赤身の肉の摂取量が少ない場合のリスクに関するデータは不正確な部分もあるとして、表では7g (0~14g)/日と書かれております。

サイコロステーキ1個って感じでございます。

⚫︎卵:安全域の292%を超過

マッスル北村が毎日10個飲んでいた卵ですが、推奨量は1日13g(週に約1.5個)となっております。しかし、現在は平均38g/日と、およそ3倍の量を食べてしまっています。マッスル換算では46倍となります。ただ、マッスル北村の場合、黄身は冷凍して庭のカラスにあげていたので、実質マッスルで言うと32マッスルくらいになるのかなと思います(黄身を30%として計算)。

卵は良質なタンパク源であり、以前はコレステロール値の高さによって卵の大量摂取が心臓病リスクを高めると指摘されていたものの、近年の大規模研究によると1日1個程度では関連が無いことが示されており、健康的なんだとさ。

⚫︎乳製品:安全域の164%を超過

牛乳やチーズ、ヨーグルトなど、健康的な食べ物のひとつである乳製品ですが、推奨されるのは250g/日となっておりますこれに対して、現代の食卓では410g/日前後が平均とのこと。みんな牛乳2杯くらい飲んでるんですね。

乳牛の飼育は肉牛さんと同じように、温室効果ガス・土地利用・水利用で特に影響が大きいと。

人間の健康に関して、牛乳や乳製品は主要な健康への影響やがんリスクとの明確な関連性は無いため、1日0~500gの幅広い摂取量において良好な健康状態を維持できるそうな。とはいえ、乳製品を植物性タンパク質源に置き換えると、全死亡率および心血管疾患による死亡率が減少する可能性もあるそうですよう(Song et.al., 2016)。

⚫︎鶏肉:安全域の117%を超過

「赤身肉よりはマシ」として、鶏肉は消費が伸びているようですが、推奨29g/日に対して約34g/日と17%オーバーしております。

こちらは赤身のように健康への悪影響は特に無いということか、言及されておりませんね。地球にとっても人間にとっても「赤身肉よりマシ」と言えると思うので、全体として消費量を減らす必要があるのは間違いないですが、特に筋肉の維持ためには重要なタンパク源でございますね。ありがとう。

個人的には、鶏に関しては地球と人間の健康もそうですが、鶏たちの動物の権利の問題もあるところだなと思いました。ケージフリーや平飼いは、ヨーロッパではたくさんありますが、日本ではまだまだですよねえと。ランセットの視野の範囲外から失礼いたしました。

⚫︎精製穀物安全域の103%を超過

小麦粉、白米などの精製された炭水化物。美味しいのは間違いないですが、過剰摂取により、糖尿病や心疾患のリスクが高まるだけでなく、精製過程で栄養素と食物繊維が大幅に失われると、ここでは健康面の指摘がされています。

「全粒穀物なら232g/日」が推奨されており、。全粒穀物および穀物由来の食物繊維の摂取量が多いと、冠動脈性心疾患、2型糖尿病、および全死亡率のリスクが低下しますと良いことだらけです。

「安全域」超えているのはわずかに3%ではありますが、地球のためにも、自身の健康のためにも減らしていきやしょうと真面目に語っています。

安全域内の食事

さあそれでは、「未来の地球が耐えられる、そして健康的な食事」のモデルを見ていきましょう。

ざっくり言えば、「野菜・果物・全粒穀物を増やして、肉と乳製品を減らそう」ということですが、1日の具体的な摂取量を以下にズドンと。

  • 野菜:300g(30%)

  • 全粒穀物:232g(30%)

  • 果物:200g(15%)

  • 豆類:50g(6%)

  • ナッツ類:50g(6%)

  • 魚:28g(3%)

  • 赤身肉(牛・羊):7g(1%)

  • 卵:13g(1%)

いやぁこれはおもしろいですねえ。動物性タンパク質は全体の5%、植物性タンパク質が12%と言ったところでしょうか。こちらは体重×0.8gをタンパク質の必要摂取量として定めているので、バズーカ岡田先生の2~3gには到底届きませんが、「筋肉の維持」という観点では十分なのでしょうね。

そして野菜と果物と全粒穀物で全体カロリーの75%摂っている。そりゃ健康も健康ですね。このモデルを世界中の人々が取り入れれば、年間約1,100万人の早死を防げるそうで、めちゃすごいモデルを作ってくれたんですね。

何より、これが地球にとっての健康にも繋がるということを忘れてはなりません。合言葉は「野菜と果物がお皿の半分」でいきましょう。そして植物性のものが95%、これが人間と地球を健康的に長生きさせてくれるんですね。

まとめ

2050年に人口は100億人近くになると予測されており、食料がより必要になる一方で、環境負荷をより減らしていかないといけない。

人にも地球にも健康的な食生活のために、赤身肉や砂糖などの不健康な食品の消費量を世界全体で50%以上削減し、ナッツ・果物・野菜・豆類といった健康的な食品の消費量を100%以上増加させることが重要だと。

現状、こういう情報を見ると罪悪感を持ってしまったり、人によっては攻撃されているように感じたりしてしまう。 しかし、まず第1歩として、「食べること」がどこかの誰かの暮らしや、地球全体のシステムにまでつながっているんだよという、『君たちはどう生きるか(本の方)』的な認識を持つことが大切だと、言うことですね。

なにも、ビーガン・ベジタリアンになろうという話でもなく、裏を返すと、1日7gの牛肉を貯金して、月1回だけ適切に管理された超美味しいお肉を210gいただくということも考えられる訳です。その方が幸福度が高いのかもしれませんねぇ。知らんけど。

参考文献

  • EAT–Lancet Commission, Food in the Anthropocene: the EAT–Lancet Commission on healthy diets from sustainable food systems, The Lancet, 2019

  • Song M, Fung TT, Hu FB, et al. Association of Animal and Plant Protein Intake With All-Cause and Cause-Specific Mortality. JAMA Intern Med. 2016;176(10):1453–1463. doi:10.1001/jamainternmed.2016.4182

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