今の暮らし25年続けるとか無理ぴょん
新学期2週目も終わりまして、昨日からボルダリングを始めました。日本人と韓国人とメキシコ人で、ドイツ人が作ったギミック壁をガシガシと登りました。
幼稚園の頃から大ガジュマルを登る特殊訓練をしていた甲斐あって、初日から8段階中のレベル4までを大方クリアし、中級者となりました。大変嬉しく思います。これも皆様のおかげです。
さて、今回は、プラネタリーバウンダリーを個人の行動に当てはめて、環境への影響を伝えてくれている論文です。
プラネタリーバウンダリーをサクッと復習しておくと、地球が人類にとって安全に機能し続けるための9つの限界値を示す概念です。最新の2023年の研究によると、すでに6つの境界を超えており、私たちの生活が地球に大きな負荷を与えていることが明らかになっています。
この論文では、デンマークの人々の生活を基に、私たちの日常生活が地球環境に与える影響を具体的に見ております〜。おもしろそう!
デンマーク人のモデル化
さあ、この論文では典型的なデンマーク人の暮らしから、消費者が共感できるように具体的な4つの主要な活動を選定し、活動レベルを定義しております。
その4つは、以下です。
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移動
→通勤、旅行、車、、 -
住宅
→家の大きさ、電力、暖房、点灯、、 -
消費財 (消耗品)
→電子機器、洗濯、服、シャワー、飲料水、、 -
食べ物
→種類(ベジ、ビーガン等)、オーガニック、新鮮、冷凍、牛乳、、
そして、1年間の活動レベルを定義しております。例えば、通勤は1日22km〜とか、服を10kg/年買う〜とか、牛乳は117kg/年飲む〜とかです。
それらの活動を現在の水準で2050年まで25年間続けた場合、持続可能性にどう影響するのかい!ということを調べております。
暮らしの中の環境インパクト
プラネタリーバウンダリーを参考に6つの指標を作りまして、デンマーク国民1人当たりで環境予算をうまく使えてんのかどうかを見た結果が、以下ズドンです。

Teddy et.al., 2025
カテゴリーは左から、機能的生物多様性・気候変動・海洋富栄養化・土地の占有・資源利用・水の消費量ですが、水の消費量以外は環境予算をめちゃ超えてる訳なんですねえ。
4つの主要な活動をサクッと見てみると、
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食料だけで4つのカテゴリーで環境予算を超えている
→機能的生物多様性536%、気候変動143%、土地利用152%、資源利用138% -
移動も単独で3つのカテゴリーで超過
→機能的生物多様性: 206%、気候変動: 145%、資源利用: 454% -
住宅も単独で2つのカテゴリーで超過
→気候変動: 215%と資源利用: 142% -
消費財は全体的な割合こそ小さいが、それでも環境予算の大きな消費を占めている
→水消費: 13%、資源利用: 232%
いや〜やはり普段から意識することはなかなかできませんが、こうして論文で示されると、我々の生活がいかに持続不可能なのかを突きつけられますね。大切な反省です。
それでは、どんな行動が環境負荷を減らしてくれるのか、具体的に見てみましょうう。
知っておくべき日々のエコ活
移動
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ガソリン車を小型電気自動車に切り替えると気候変動予算が129%から50%に減少
→ただし、資源利用は67%から230%に増加してまう -
通勤時、ガソリン車から電動バイクにすると、気候予算の消費が62%から5%に減少
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飛行機は、年間平均飛行距離(約8700km)によって、気候予算の64%~103%が消費される
住宅
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今日の平均的な新築住宅に住むことは、資源予算の115%~121%を消費する
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石油ボイラーからヒートポンプの暖房に切り替えると気候変動予算の82%から12%に
→資源予算の消費は10%から25%に増加してまう -
太陽光パネルを設置すると、気候変動予算が17%から4%に削減される
消耗品
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テレビの所有は資源予算の188%で、ノートパソコンの所有も65%になる
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シャワーを10分から5分にすると、水予算の消費を20%から10%に減らせる
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洗濯の温度や、マイバッグの使用は、どのカテゴリーでも大きな変化がない
食料
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雑食の食生活は、機能的生物多様性: 384%、気候変動: 101%、土地占有: 149%
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ベジタリアンまたはビーガンに転向すると、気候への影響はそれぞれ33%と22%に減少
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牛乳の消費量は、機能的生物多様性予算の84%と土地占有予算の28%を占める
→オーツミルクに置き換えると、それぞれ2%と1%と大幅に減少する
やはり注目すべきは食料のところじゃないでしょうか。ドイツにいるとベジタリアン・ビーガンの選択肢が無いお店なんか逆に見たことないですが、日本ではまだ珍しいくらいですよね。この食生活に関する記事も面白いので、追々書いていきやす。
研究者は、よりシンプルなライフスタイルへの転換が不可欠とした中で、技術進歩を通じた環境にやさしい生産システムや、公共交通機関の拡充などの社会全体の変化も重要だと述べています。
個人的に思うのは、バイオエコノミー50年の文献レビューで見たように、個人レベルでの消費行動に関する研究がけっこう弱いので、こういう研究をいろんな国で増やして、暮らしガイドラインみたいなものを自治体や地域ごとでごりっとまとめたりなんかして欲しいなぁと。
まとめ
とにかく、現状の移動や住宅、消耗品、食生活は持続可能とは到底言えないよということです。以下に軽くまとめます。
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移動手段を見直す: 車の利用を減らし、公共交通機関や自転車、徒歩などを利用する
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エネルギー効率の良い家電を選ぶ: 省エネ性能の高い家電を選び、長く大切に使う
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食生活を改善する: 肉の消費を減らし、野菜や果物を中心とした食生活にする
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物を大切にする: 使い捨てのものを避け、長く使えるものを選ぶ。リサイクルを積極的に行う
別にとんでもない変化はないと思うので、楽しんでいきやしょう。
参考文献
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Teddy Serrano, Samir Meramo, Anders Bjørn, Michael Hauschild, Sumesh Sukumara, Morten O.A. Sommer, Communicating the environmental impacts of individual actions in the context of Planetary Boundaries, Sustainable Production and Consumption, 2025, ISSN 2352-5509, https://doi.org/10.1016/j.spc.2025.03.021.
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