エコロジー経済学30年の文献レビューを見てみよう
こんにちは、こちらは2学期の最初の1週間が終わりました。会計学や経済学分析で数学的に忙しいのと、グループプロジェクトが2つで大変な感じがしております。
皆様も新年度がんばってくださいい。
さあ今回は、エコロジー経済学の30年間の文献をレビューしてみた論文でございます。
軽く復習しておくと、エコロジー経済学は、伝統的な経済学に対して、生態学や物理学的な法則を用いた全体論的なアプローチを通じて代替を提案する経済学でございます。環境資源を、経済が利用できる外部要素として捉えるのではなく、経済を形作る上で不可欠な要素として考えます。
また、「環境と経済」ではなく、「環境の中に経済」というビジョンを持っているので、地球の物理的限界に従って、経済の規模にも限界があるという主張が中核にあります。
そして、今回の論文は、スコーパスのデータベースにある1989年から2023年に執筆された6,493本の文献のうち、5,764件の論文をレビューして、全体の傾向や、特に重要な論文、著者をピックアップしています (Bagow et.al., 2025)。
論文数と著者と国と大学と、
まずは論文の数ですね。
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1989年に18件の論文が出版
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2009年には、25,123件の論文に引用される (最多年)
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2018年が364件が出版 (最多年)
1989年以降、論文数は飛躍的に増加し、2006年あたりから継続的に年間200~300本が出版されており、この数字は驚異的だと評価されています。
最も多くの論文を執筆したのは、
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ロバート・コスタンザ (アメリカ・メリーランド大学) 40本
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ヴァン・デン・バーグ (オランダ・アムステルダム大学) 32本
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ニック・ハンリー (スコットランド・スターリング大学) 32本
と、上位2名は僕もよく読んでおり、エコロジー経済学の解説記事でもお世話になりました。
歴戦の猛者だったんですねえ。ありがとうございます。
最も引用された論文は、ピメンテルさんら(2005)による、
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"米国における外来侵入種に関連する環境および経済コストの最新情報"
で、引用数は3,351件です。内容は、「アメリカに外来種が約50,000種持ち込まれ、絶滅危惧種リストの約42%は外来種の侵入によるものであり、年間約1,200億ドルにのぼる環境被害と損失が確認された」というものです。すごい研究ですな。
最も出版した国は、
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アメリカ 1735件
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イギリス 714件
と、アメリカがダントツトップなのは驚きでした。著者の所属国の中でもアメリカが最多で、イギリス、ドイツ、オーストラリア、オランダを大幅に上回っているとのことです。
引用件数の多さで言うと、オランダのワーゲニンゲン大学がトップだそうで、さすが農業QSランキング世界一でございます。僕は最近ここの留学に応募しましたが落ちました。ゴロツキを入れないという懸命な判断もできるようですね。
よく出てくるキーワード
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気候変動
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サステナビリティ
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生態系サービス
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農業
なんかが挙げられておりました。特に意外性はありません。引き続き頑張ってくださいませ。
各国の共著ネットワーク
この文献レビューってのは、これまでの研究をいろんな指標で測って体系化するものでして、この論文の中では、9つもの図が示されております。そのうちの1つとして、各国の著者がどのようなつながりを持っているのかを示す共著ネットワークを挙げさせていただきましょう。

Bagow et.al., 2025
日本は右上にちょこんとおりまして、様々な繋がりは持っていそうな気配がしますね。アメリカ、イギリス、ドイツなどに負けず、より勢力拡大を目指して頑張りたいところです。
まとめ
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1989年以降、特に2006年頃から論文数が伸びまくっている
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アメリカが1番出版している、イギリスが2番
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日本は弱め
参考文献
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Bagow, S., Altaf, N., Qayoom, A., & Wani, B. (2025). Three decades of research on ecological economics domain: A bibliometric analysis. EconomiA. https://doi.org/10.1108/ECON-03-2024-0031
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David Pimentel, Rodolfo Zuniga, Doug Morrison, Update on the environmental and economic costs associated with alien-invasive species in the United States, Ecological Economics, Volume 52, Issue 3, 2005, Pages 273-288, ISSN 0921-8009, https://doi.org/10.1016/j.ecolecon.2004.10.002.
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