代替米「アナログ米」の可能性

2025年10月10日の論文。キャッサバ・さつまいもからお米を作れるらしい。
keene 2025.10.26
誰でも

留学先の同じコースに日本人がいました。これまでドイツではサボっても、見てるのは自分だけでしたが、日本人の友達がいるとすぐにバレてツッコまれますので、サボりづらくなります。友達の圧力は大事なものですね。がんばりましょう。

さて今回は、今年世間を賑わせた「お米」です。ドイツ・オーストリアでは基本的に細長いさらさらのお米しかないので悲しいものですが、日本を含めたアジア圏では、基本的なカロリーとして重要です。

しかし、その裏側で、従来の水田稲作が地球環境に大きな負荷をかけていることも知っておきたいところです。水田は大量の水を消費し、メタンを多く排出するため、水不足や気候変動が深刻化する現代において、持続可能性の観点から課題を抱えています。

そんな中、インドネシアや韓国の研究者チームは「環境に優しい代替食品としてのアナログ米の可能性」というレビュー論文を発表し、環境に優しい新たな食品の可能性を探求しています。日本では絶対受け入れられなさそうな研究ですが、発想が面白いので、あえて取り上げてみます笑。

「アナログ米」とは何か?

はじめに、そもそもアナログ米とは「米ではない原料から作られ、見た目、調理特性、食感が従来のお米に似るように加工された、米粒状の食品」と定義されています。

米以外の多様な作物を原料にできる点が最大の特色で、論文では、主に以下のような作物が挙げられています。

  • キャッサバ: タピオカの原料として知られる芋。痩せた土地でも育つ。

  • ソルガム(モロコシ): 乾燥に非常に強く、少ない水で育つイネ科の穀物。

  • サツマイモ: 栄養価が高く、様々な土壌に適応できる。

  • トウモロコシこんにゃく芋 など

これらの作物は、稲作には向かない「限界地」で栽培されることが多いため、水田などに適した場所でなくても広く栽培できるという点でメリットがあるという訳です。

次に、気になる作り方ですが、アナログ米の製造には、主に「押出成形」という技術が用いられます。これは、原料となる粉に水などを加えて混ぜ、高温・高圧をかけて機械から押し出し、米粒の形に成形・乾燥させる技術です。

パスタやスナック菓子を作る工程と同じ感じだそうです。まとまった生地を米の形にして乾燥させるということが「連続的」ということから「アナログ」なのでしょうか、、

そして、最大の魅力は「おいしいさ」という訳ではなく、「栄養を自由にデザインできる」という点です。論文では、従来のお米は栄養素が固定されているのに対し、アナログ米は製造過程で様々な栄養素を添加・強化できると指摘しています。例えば以下の通りです。

  • 豆類を加えてタンパク質を強化

  • こんにゃく芋を加えて食物繊維を豊富に

  • ビタミンやミネラルなどの微量栄養素を添加

なので、特定の健康ニーズに合わせた「機能性食品」として設計することができるということです。ダイエット食品やサプリメントなんかと組み合わせて販売したら、ボディビルダー界隈でバカ売れしそうな気配もしますね。

なぜ「環境に優しい」のか? 

栄養面に利点もありますが、論文の核心は「環境面」での優位性です。普通のお米とアナログ米の環境への影響を複数の観点から比較すると、以下のように違いが見えてきます。

【土地利用】

  • 従来米: 肥沃で灌漑設備が整った「水田」が必要。

  • アナログ米: 原料作物は、稲作が困難な「限界地」でも栽培可能。

【水消費量】

  • 従来米: 1kgの米を生産するために、2,000~5,000リットルの膨大な水を消費。

  • アナログ米: ソルガムやキャッサバは乾燥に強く、1kgあたりの水消費量は1,000リットル未満

【温室効果ガス排出】

  • 従来米: 水田では、土中の微生物が有機物を分解する過程で「メタン」が大量に発生

  • アナログ米: 主に畑で栽培される原料作物を使用するため、「メタン」の発生は無い

【資源投入】

  • 従来米: 収量を維持するために、多くの化学肥料や農薬が必要。

  • アナログ米: 原料作物の多くは、より少ない肥料で育ち、病害虫への耐性も強い。

【気候変動への強さ】

  • 従来米: 干ばつや洪水に弱く、気候変動の影響を受けやすい

  • アナログ米: 原料となる干ばつに強い作物を選ぶと、気候変動下でも食糧生産が安定

つまり、アナログ米の原材料は比較的簡単に生産でき、さらに、原材料によっていくらでも調整ができるので、気候変動への適応策としてかなり柔軟性があるよ、ということですね。

味についての言及が無いのは普通に困りますが、猛暑で米が採れづらくなった際に、最終的なバックアップとして機能するというふうに捉えていたら良いのかなと思います。

さらに論文は、アナログ米が「サーキュラーエコノミー」を促進する可能性も指摘しています。例えば、「キャッサバの皮」や「トウモロコシのぬか」など、これまで廃棄されていた農業副産物を粉にしてアナログラの原料に加えることで、食品廃棄物を削減し、新たな経済的価値を生み出すことができると言います。

こちらに関しても「味」の言及が無くて大変困りますが、とにかく「Waste to Wealth (ゴミから富を生む)」の考え方は非常に重要なので良しとしましょう。

社会・経済にもたらすメリット

さらなるメリットとして上げられているのは、社会・経済的なメリットです。

  • 食料安全保障の強化: 単一の作物(米)への過度な依存を減らし、食料供給源を多様化させる。これにより、米の不作や価格高騰といったリスクに強い食料システムを構築できる。

  • 農村地域の開発: これまで十分に活用できなかった地域で、新たな作物を生産することで、小規模農家の収入向上や新たなバリューチェーンの創出につながる。

  • 中小企業の活性化: アナログ米の加工や商品開発は、地域のマイクロ・中小企業(MSMEs)が参入する新たな市場となり、地域経済を活性化させる可能性がある。

日本に当てはめて考えると、やはり米の価格高騰ですね。基本的なリスク管理の考え方からすると、「卵を1つのカゴに盛るな」の通り、うまく食のポートフォリオを分散させることで、よりレジリエンスの高い食料安全保障ができます。なので、論文に忠実に従うなら、アナログ米も導入しながら、従来米への一極集中を減らしていきましょうということですね。

その結果、米を育てられなかった地域でも、新たにキャッサバ・とうもろこし・さつまいも農家が生まれ、それをアナログ米に加工する企業が生まれ、バリューチェーンを作り出すことができるという理屈です。

普及に向けた課題と戦略

このように、環境負荷が低く新たな産業を生み出すポテンシャルのあるアナログ米ですが、以下のように、課題も多く指摘されます。

  • 消費者の受容性: 従来のお米とは異なる味、食感、調理特性が、市場に受け入れられるための最大の障壁になる。

  • 高い生産コスト: まだ生産規模が小さいため、従来のお米に比べて価格が高くなりがち。

  • 規格・規制の欠如: 品質を保証するための標準的な規格や、規制が整備されておらず、消費者の信頼を得にくい。

  • 認知度の低さ: アナログ米の栄養面や環境面での利点が、一般の消費者に十分に知られていない

味、食感、調理特性が異なることが上げられていますが、確かに炊飯器で普通に炊けるのかどうかが一番大事ですよね。他の課題に関しては、まだ市場や技術が未成熟だということなので、「認知度」をはじめとした市場の需要さえできればなんとかなりそうです。

最後に、この問題にどう取り組んでいけるのかという戦略について見ていきます。

  • 技術革新: 押出成形技術の改良や、原料の配合研究を進め、味や食感を向上させる。

  • 政策による支援: 政府が補助金を出して生産コストを下げたり、学校給食に導入したりして需要を創出する。

  • 規格の整備: 品質基準や認証制度を確立し、製品の信頼性を高める。

  • 消費者への啓発: 環境や健康への利点を伝えるキャンペーンなどを通じて、認知度と理解を深める。

なるほど、アジアの国それぞれの状況を詳しくはわかりませんが、政府の補助金や学校給食への導入ができれば、たしかに地道に市場を開拓していけそうですね。特に、僕の感覚上、日本よりも東南アジアの方が環境意識、気候変動による被害意識も高いので、キャンペーンなどで正しく伝えることができれば、けっこう良い線行く気もします。

しかし、やはり日本の目線で考えると、技術革新が進んで味や食感が向上しても、あのおいしい日本のお米にはなかなか対抗できる未来が見えません。気候変動適応の観点でも、暑さに強い米の品種を開発するとかが基本になってくるでしょう。

もし日本に導入するなら、「栄養」を全面に押し出して、「タンパク質」「食物繊維」を強化したお米として、ダイエット・フィットネス業界に売り込むということではないでしょうか。それなら僕も試してみたいなと思います。

まとめ

  • アナログ米とはキャッサバ、トウモロコシ、さつまいも等の原料から作られ、お米に似るように加工された、米粒状の食品

  • 水の消費量、メタンの発生量、肥料などの観点で、従来米より「環境に優しい」

  • 食料安全保障や新たな産業の観点で「社会・経済的」

  • 味や調理工程が異なる、認知度、市場が未成熟などが課題

  • 日本に持ってくるなら、サプリメント市場。しらんけど。

参考文献

  • Bahlawan, Z. A. S., Megawati, M., Damayanti, A., Desiriani, R., Maulana, A. Y., & Christwardana, M. (2025). The Potential of Analog Rice as an Environmentally Friendly Food Alternative: A Mini Review. In E3S Web of Conferences (Vol. 650, p. 02060). EDP Sciences.

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