健康で文化的で持続可能な "食" のために
さあ4月も後半戦。ドイツは朝夜はちょい寒ですが、昼はもう半袖でいけます。たんぽぽがめちゃくちゃ咲いて、リスも走り回り出したので、僕もさらに気合い入れていこうと思います。
前回では、人間と地球両者にとって健康な1人あたりの食事は、野菜果物が50%で動物性の食品は10%くらい、加えて全粒穀物を増やしていこうね〜ってな話をしました。
今回は、このレポートが出している5つの戦略をサクッとおさらいしておこうという感じです。
2023年4月時点で11,217件引用されているマンモス論文なので、覚えておいて損はないですね。
食の変革のための5つの戦略
これは本レポートの最終章に書かれていることで、地球規模の「持続可能な食料システム」という問題に対して、強力なエビデンスと共に策定したと言っております。また、これらの戦略は「容易に実行可能だ」とも言っており、国や都市、地方などの異なる状況においても有効な指標になると述べておられます〜!
戦略1:健康的な食生活への移行に向けた国際的・国内的な取り組みを求める
これが1番大切なようで、この1つの戦略の中に6つも提案が書かれています。サクッとどうぞ。
1. 健康的な食事へのアクセスと入手性を高めるべき
高所得者会では、量・選択肢・包装を削減し、現在よりも少ない量を提供することが重要で、低所得社会では、物流と貯蔵の改善、食品の種類と季節性を高めることが大切だと。まずは適量の健康食生活がいつでも食べられるように整えましょう。
2. 健康的な食生活は手頃な価格で提供されるべき
食料価格は、肥料・水・燃料などを含めた真のコストを反映させるべきだけれども、脆弱な立場にある人の社会的保護やセーフティネットを構築することが重要だと。現金給付などで直接的に所得向上をさせるのもひとつです。
3. 不健康で持続不可能な食品の広告やマーケティングを制限すべき
政府・産業界・社会が、持続可能な食料システムや健康的な食生活への積極的差別化を支援するための新たな取り組みが必要とのことです。確かにジャンキーな広告を見つけたらちょっとそそられてしまいますもんね〜。
4. 持続可能で健康的な食生活について、個人に教育を行うべき
教育は、政府による規制や財政措置よりも効果は薄いですが、そのような措置をする上で前提条件ともいえる基盤だから重要であると。すぐには変わらないけれども、まずは知るところからですねえ。
5. 美味しく、文化的にも適切な食生活を推進すべき
当たり前だぁ。ですが、大規模な食生活が求められている中、健康で美味しく文化的であることは必要不可欠なんですな。これは日本、特に京都が引っ張っていってほしい。ほんとに湯葉定食とか天才っすよあれ、なんであれ大豆であんな美味しいん。
6. 学校給食や病院などの公共の食事提供を見直すべき
医療施設における食事サービスに持続可能で健康的な食品を使うことで、その基準を患者に示せると。さらには、食の嗜好は生後数年、また妊娠中にも形成される可能性があるので、栄養の観点も含めて母子プログラムに組み込む必要があると言っています。わお重要!
さあ、健康的な食へ移行するための取り組みを6つ挙げましたが、簡単にいうと、「健康的で文化的で美味しい食事を適切な価格でアクセス可能にし、教育や医療の施設でも広げていこう、そんで不健康なものは広告すらも遠ざけよう」です。まあ当たり前っちゃ当たり前ですが、そう簡単には地動説は広まりません。
戦略2:農業の優先順位を大量食料生産から健康食品生産に転換する
「生産量の多さ」から、「作物の多様性」と「栄養価の高さ」へと重点を置くようにシフトするため、国家・世界レベルにおいて農業政策は栄養改善に努めるべきだと言っております。
具体的には、より栄養価の高い植物性食品の生産を促すインセンティブをつけたり、栄養改善と持続可能性に関する農業研究に投資をしたりすると良いそうな。
動物性食品の需要の高まりは、土地利用を圧迫し、GHGガス排出量を増加させ、水も大量に消費します。しかし、貧困緩和や栄養状態の改善に不可欠なこともあるので、そのような特定の状況においては、またどのように対応できるか判断しなければならないということです。
戦略3:持続可能な形で食料生産を強化し、高品質の生産物を生み出す
多様な、栄養価の高い食料にアクセスできるようにするために、政府は精密農業の導入を支援すべきだという主張です。精密農業とは、例えば水1リットルあたりの収穫量を高めるために、適切な品種や密度、時期などをハイテク技術により計算して、超効率に生産する方法です。かなりコストもかかるので、中低所得国では政府の援助が必要になります。
他には、農場からの栄養損失を防ぐために低耕起、過剰な肥料使用の対策としての水質目標など、さまざまな問題にさまざまな対策があります。
また、生態系を保全することで、種や生物の多様性が農業のレジリエンスをグッと高めてくれて、収量損失まで防いでくれることがあるそうです。
戦略4:陸と海の強力かつ協調的なガバナンス
土地の効果的なガバナンスに関しては、自然生態系を犠牲にした新しい農地の開拓を阻止することが1番重要です。直接的な規制として、手付かずの生態系を厳格に保護したり、保護地区の伐採停止などがあります。
特に森林破壊を最小限に抑えたり、地域間の土地の管理を最適にしていくためには、国際的なガバナンスが必要になります。土地の修復のために金銭的インセンティブを出したり、修復しない土地所有者に制裁を課すことで土地の回復や保全が促進できます。
海の生態系の保全に関しても、将来にわたる天然魚介類の継続的な供給に非常に重要です。寿司がなくなって欲しい人はいません。そのため、責任ある漁業のための行動規範を作成したり、特定の海域での漁業を禁止したりと、厳格なガバナンスが重要です。
戦略5:世界のSDGsに沿って、食品ロスと廃棄を少なくとも半減させる
低所得・中所得国では、収穫時期の不備や市場へのアクセスの悪さから、生産初期段階における食品ロスが多いため、収穫後のインフラへの投資を増やすことで、食品ロスの削減に貢献できます。また、乾燥や包装技術などの加工技術への投資も重要ですねぇと。
「先進国の食品ロスの大部分は国民の責任である」。これははっきり言い過ぎやろと思いますが、ほんとその通りですね。国は、廃棄物政策や食品安全政策、食品基準規則、食品再分配政策、そして食料補助金を通じて、食品ロス削減を組み込むことができるといいます。
財政的なインセンティブや廃棄物削減プログラムは、関係者の協力やイノベーションを促進することができますと。
若干具体性には欠けましたが、食品ロスを減らす努力について、政策的な目線からマクロに回答しておりますね。どんどん進んでほしいです。
まとめ
「健康的で文化的で持続可能な食事に、適切な価格でアクセスでき、農家を財政的に支えて栄養価の高い高品質な農作物を効率的に作り、国際的にそれらの基盤となる土地や海を守ろう!」が積極的に進めることで、反対に、「不健康で持続不可能な食品と、食品ロスを減らそう!」が積極的に排していく目標って感じですね。
人間も地球も健康になるために、まずは自分の食卓からより豊かにしていきましょっと。
参考文献
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Food in the Anthropocene: the EAT–LancetCommission on healthy diets from sustainable food systemsWillett, Walter et al.The Lancet, Volume 393, Issue 10170, 447 - 492
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