【環境経済学】ミクロ経済学で環境問題の解決を
やっぱりバイオエコノミーなんて横文字使わず、確立した学問をきちんとさらっておこう、ということで、まずは大玉「環境経済学」を軽くまとめていきやす。
こちらは一言で言うと、ミクロ経済学のモデルを環境問題に応用したものです。
需要供給曲線なんて聞いたことあると思うんですが、それがミクロ経済学の基本的なモデルです。
何がミクロなんだと言われると、「企業の生産行動」や「消費者の消費行動」を別々に考えているからです。逆にマクロ経済学ってのは、それらをまとめて経済成長って形で国内で生み出した利益を考えたりすることなんですね。
環境経済学の超基本
理論的な基礎を築いたのは、イギリスの経済学者ピグーさん(1877‑1959)です。産業革命の直後、まさに経済大成長時代にいたピグーさんは、蒸気機関による環境被害に目を付けます。
すると、蒸気機関車から出た煙が近隣の畑に入って、農作物が被害を受けていました。
すかさずピグーさん「企業が煙の処理を怠ってるんちゃいますの!あんたらが負担しなはれ!ほんま、怠ってんちゃうど!」と、関西弁で言ったとされています。
これがピグー税という環境税の一種です(Chai et al., 2010)。

筆者が学部時代、後輩のために環境に優しい経済学について話した時のスライド (わかりやすい)
図の通り、供給側である企業は、本来、煙害防止フィルターを取り付けるなどの施策をすることでコストが掛かっているはずです。しかし、それがなされずに低い価格を保ってやがる。そこに政府が介入して税金を課すという流れですね。
現在、環境税・炭素税と呼ばれるものは、このピグー税の一部です。
炭素税
そしてこの税金は、環境を守ったり、地域住民の健康を守ったりするためにはかなり効率の良い方法です。
例えば、カリフォルニア州で行われた研究では、
1998年〜2008年の間に、1ガロン(約4L)当たり1ドルのガソリン税(炭素税)によって地域の大気汚染が約85%減少し、地域住民の健康上の利益が約90%増加した。
けっこうすごいことですよね〜。こんなにわかりやすく改善できんのかって思いますが。
もちろん、この結果には車の燃費が良くなったということも含まれるので、全てが炭素税のおかげ!ピグレット万歳!とはいかない訳です(🐷)。
また、環境に優しい車に対して補助金を出すという政策もあるにはあるんですが、こちらはむしろ炭素排出量を増やしてしまう可能性もあってですね、
「燃費良くなったから、もっとドライブ行っちゃお〜!」というインセンティブが生まれ、さらにガソリンの消費が上がっちゃうことがあります。これをジェボンズのパラドックスなんて言ったりします。
脂肪50%offのマヨネーズは倍かけてもおっけーやんみたいなことですね。
というわけで、環境経済学の基本を見て行きましたが、ピグーひきいる炭素税・環境税というのは、環境経済学における強力な武器なんですねってわかっていただければラッキーです。
他にも環境経済学には、環境保護の補助金や排出権取引、自然の所有権を決めるコースの定理なんてものもあり、それも面白いのでまたどこかで書きましょう。
まとめ
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環境経済学とは、ミクロ経済学の仕組みを環境問題に適応したもの。
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環境問題を起こしている市場に、政府が税金をかける「ピグー税」が強力な武器。
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炭素税はけっこう効率良く環境問題を緩和できる。
参考文献
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Chai, J. V., Chen, C., Giauque, F., & Zhu, W. (2010). Coase vs. Pigou in the Petroleum Market. 3(2), 17–24. https://doi.org/10.21153/DPIBE2010VOL3NO2ART186
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Knittel, C.R., & Sandler, R. (2018). The Welfare Impact of Second-Best Uniform-Pigouvian Taxation: Evidence from Transportation. American Economic Journal: Economic Policy.
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