【バイオエコノミー】化石燃料からバイオへのシフト

「化石燃料に頼らず、生物由来の資源で地球に優しく経済やりまっせ」
keene 2025.02.20
誰でも

「サーキュラーエコノミー」は聞いたことあるよって人が多いかもしれないですね。

2025年時点で、バイオエコノミーは日本ではあまりまだ浸透していない単語です。なにせ日本語にしたら「生物経済」ということで、何を言っているのかがわからない。

ただ、今ドイツの大学院でバイオエコノミーコースなるものに所属しているんですが、これは「サーキュラーエコノミーと対を成して一緒にやるもんです」と教えられます。「サーキュラー・バイオエコノミー」って呼び方もよく論文で見かけます。

平たくいうと、「化石燃料に頼らず、生物由来の資源で地球に優しく経済やりまっせ」という感じです。例えば、「プラスチックの原料を石油からサトウキビにしたったらええんちゃう?」みたいなノリですね。

他にも、「世界の食糧供給を安定させること」や、「持続可能な農業生産をすること」、「バイオマスを使ったエネルギーを増やすこと」等、かなり包括的な概念です。

これまでの経済効率性のみを追い求めてきた時代から、より環境や動物や人に配慮した経済に変わっていくよという様々あるオルタナティブな経済学の1つです。

大まかな歴史

  • 1960年代後半にゼーマンさんが「バイオエコノミクス」という単語を使って、「経済活動に生物学的な本質を認めることが大事」と言ったのが始まり(Bonaiuti, 2014, p.52)。

  • 1970年代にレーゲンさんが「いけるでこれ!」って感じで使っていき、「無制限な成長は自然の基本法則と両立しない」ってことを言っているわけです(Bonaiuti, 2014, p.52)。

  • 1997年、「バイオエコノミー」という言葉が遺伝学者のエンリケスとマルティネスによって定義される(von Braun, 2014, p. 7)。

  • 1997年、「バイオエコノミー」という単語が、米国科学振興協会の会議で初めて使われる。

  • 2009年、OECDのレポートに 「バイオエコノミー 2030」が出現。

  • 2012年、EU 欧州委員会にて、「持続可能な成長のための革新: ヨーロッパのためのバイオエコノミー」 、オバマ政権も「国家バイオエコノミー ブループリント」を召喚。

  • 2017年までに、49カ国がバイオエコノミーに関する政策を立案 (BÖR, 2017)。

  • 2019年、日本もやっとこさ「バイオ戦略」を発表、2024年に「バイオエコノミー戦略」に改称。

ややこしいところですが、70年代辺りの「バイオエコノミクス」は、アカデミックな単語として盛り上がっていて、90年代以降にできた「バイオエコノミー」は、社会的・政治的な単語として使われている形です。けっこう意図するところも違うので「運命の皮肉」と言われているそうな(Lewandowski, 2018 p.19)。

実際、大学院の授業でも「バイオエコノミーを学ぶ」というより、「農学・自然科学・経済学を分野横断的に学ぶ」感じで、それらをいかにバイオにシフトするかということをやっているので、バイオエコノミーそれ自体は学問領域ではないんですね。

バイオエコノミーは、あくまで社会的な概念だという認識です。 

2つのバイオエコノミー

大きく分けると、「資源の代替」・「バイオテクノロジー革新」という2つの観点が存在します。

「資源の代替」は、「石油資源を生物資源に変えていこう」っていう動きで、

OECDや旧オバマ政権、そして日本が意味しているものは、「バイオテクノロジー革新」の観点になります。

初めは、オイルが枯渇するということの代替案として出てきたバイオエコノミーでしたが、採掘技術の発展などによって、その観点はちょい弱めに。

その反面、パリ協定の合意などから、化石燃料を使うのを減らしていきましょ〜って観点で「バイオテクノロジー」を進めていくことになったんですね(BÖR, 2014)。

もちろん、バイオ燃料を作ろう!って言うことは、「資源の代替」でもあり「バイオテクノロジー革新」でもある訳ですから、両方の視点が大事です。

特に、自然資源が豊富な国はバイオ燃料やバイオ由来製品を作るのに向いてるので、ぜひとも日本は「資源の代替」に注力して欲しいところです。

日本のバイオエコノミー戦略

さて日本ですが、まず発表が2019年ってのが、世界的に遅くもあり、他国の状況を伺っており慎重という、いかにも日本な数字です。

まずこのプロジェクトの主体ですが、経済産業省ではなく、内閣府がやってるってのが面白いですね。経産省、農水省、林野庁などが絡んでる大きなプロジェクトなんですって。

バイオエコノミー戦略」は以下の5つの領域で進めるそうです。

(1)バイオものづくり・バイオ由来製品

(2)持続的一次生産システム

(3)木材活用大型建築・スマート林業

(4)バイオ医薬品・再生医療・細胞治療・遺伝子治療関連産業

(5)生活習慣改善ヘルスケア、デジタルヘルス

全体的に、イノベーション、テクノロジー、スマート、などの言葉が多く、やはり「バイオテクノロジー革新」の視点が強いなあという印象です。

日本政府伝統的文化芸術品の最高傑作であるポンチ絵を見ると、

・バイオものづくり・バイオ由来製品 

・一次生産等(農林水産業)

・バイオ医薬品・再生医療等、ヘルスケア

シンプルな三部構成で、こちらの図になると、すごい経済の環境負荷低減と持続可能な農業を推しているように見えて、少々好感を持てました。

・若手研究者について研究に専念できる環境整備、競争的研究費の充実

とも書いてたので、めっちゃ好感を持てました。一生ついていくっす。

個人的には、日本は自然資源が豊富な訳ですから、より「資源の代替」の観点から、バイオマスなどの自然資源をいかに活用するかを考えたいなと思ってます。

最近よく見てる東出昌大さんのYouTubeみたいな感じで、薪を燃やしたりしたいなあと。

まとめ

バイオエコノミーは、気候変動の原因のひとつである化石燃料からの脱却が大きなテーマであり、生物資源とバイオテクノロジーを活用して経済の根幹を変革していくもの。2030年にかけて、EUをはじめ、日本でも推進していくらしい。

参考文献

  • Bonaiuti M (2014) Bio-economics. In: D’Alisa G, Dematia F, Kallis G (eds) Degrowth: A vocabulary for a new era. Routledge/Taylor & Francis Group, Abingdon/Oxon, pp 52–55

  • BÖR (2017) Bioeconomy policies and strategies established by 2017. Diagram prepared by the GermanBioeconomy Council (Bioeokonomierat – BÖR), Berlin

  • BÖR (2014) Positions and strategies of the German bioeconomy – decided at the 8th session of the council 14.5.2014 German Bioeconomy Council (Bio€okonomierat – BÖR), Berlin

  • von Braun J (2014) Bioeconomy and sustainable development – dimensions. Rural 21(2):6–9

  • White House (2012) National Bioeconomy Blueprint. Washington, DC

  • Lewandowski, I. (Ed.). (2018). Bioeconomy: Shaping the Transition to a Sustainable, Biobased Economy. Springer International Publishing. https://doi.org/10.1007/978-3-319-68152-8

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